激闘! 八八艦隊海戦史DXジュットランド海戦付


対応機種 Windows 95/98/Me/2000/XP
価格 9800円
発売年 2001年
備考 ネット対戦可

初出 : 2002/01/01


紹介
Windows版「激闘!」シリーズ第2弾です。
最初に断っておきますが、本作品は「激闘! 欧州海戦史」のリメイクではありません。
「激闘! 八八艦隊海戦史『DX』」と付いていますが、無印の八八艦隊海戦史は存在しません。

さて。
激闘! ソロモン海戦史DX」が水雷戦隊による夜襲の再現を狙った作品であるのに対し、「八八艦隊海戦史」は戦艦による砲撃戦の再現を狙った作品です。
しかし戦艦は航空機の驚異的な発達により、第二次大戦の時には海戦の主役の座から下ろされてしまっています。
ジェネラル・サポート社のかつての「戦艦の為の作品」である「激闘! 欧州海戦史」は、戦艦にとっては黄昏の時代を舞台に選んでいました。
それに対し今度の「激闘! 八八艦隊海戦史」は、戦艦という鋼の化け物の黄金時代を舞台に選んでいる点が特徴です。
それは、第一次大戦を頂点とする、その前後数年の短い時代。
ジェリコー統べる世界最大最強の大英帝国艦隊や、この覇権に挑むシェーア率いるドイツ大海艦隊の戦艦たちが、峻烈な輝きを放ち、そして消えていった時代でした。
プレイヤーはこれら戦艦艦隊を操り、シナリオ毎に定められた条件、つまり敵の戦艦艦隊を打ち破らなければなりません。


内容説明
細かい説明は不要です。

大艦巨砲主義

この一言でこの作品が言い尽くせると思います。
細かいツッコミはマニュアルのデザイナーズノート参照のこと(笑)<逃げる逃げる


とにかく、「戦艦の戦艦による戦艦のためのゲーム」です。
駆逐艦や巡洋艦とかいう代物は、戦艦にとっては主砲砲戦の片手間で片づけられるような微弱な存在に過ぎません。
酸素魚雷のような長射程魚雷(2万メートル程度)でもない限り、戦艦の主砲砲戦距離(2万メートルかそれ以上)の間に割り込み命中魚雷を得ることは至難の業であり、存在意義のほぼ全てを魚雷に頼っている駆逐艦など昼間砲戦の間に出る幕などあろうはずがありません。
巡洋艦もまた然りで、15cm程度の豆鉄砲を何十発ぶつけてみたところで、鋼の塊である戦艦の戦闘能力の主要部分には何らのダメージを与えることもできません。

ジュットランド海戦の戦闘経過を見ればわかるのですが、戦艦同士の砲撃戦の最中、駆逐艦は戦艦戦隊の隊列の非敵側に連なっています。
戦艦の副砲で一掃されてしまう程度の戦力である駆逐艦では戦力の足しにはなりませんし、ゲーム上では再現できませんが、石炭炊きの駆逐艦は煤煙が戦艦の砲戦の邪魔になるというマイナス要素の方が大きいです。
まかり間違っても戦艦戦隊の敵側にいることはありません。

要するに戦艦は無敵の存在なのです。
小艦艇ファンの皆さん、潔く諦めましょう(笑)


戦艦、硬すぎる。
巡洋戦艦、柔らかすぎる。

どこかの辞典のようですが、この表現、プレイしてみれば痛いほどによくわかります。
とにかく戦艦は硬い硬い。
弾が当たる距離と、装甲が抜ける距離とを取り違えないことが勝利への第一歩です。
装甲の硬いドイツやアメリカ戦艦と対戦する場合、最大射程よりもう一歩踏み込んでみて下さい。
所謂「肉を斬らせて骨を断つ」です。
自軍にも大きな損害が生じるでしょうが、相手にも確実に損害を与えられます。
最大射程での戦だと、命中弾を得られても装甲に弾かれる嫌な効果音をひたすら聞く羽目になります。

それと、敵艦隊より優勢な武器は何かを見極めることも重要です。
敵に勝る大口径砲を装備していても少数では役に立ちません。
フォークランド沖海戦を例に取れば、英軍側では15cm砲装備の巡洋艦の使い方がキーです。
ドイツ艦隊はシャルンホルスト型2隻以外は10cm砲装備のブレーメン型のみであり、15cm砲の射程を決戦距離に取れば、ドイツ艦2隻に対してイギリス側は6隻全部の砲力を有効に割り振れます。
30cm砲を装備する巡洋戦艦だけで戦に勝とうとすると、ラッキーヒットがない限り時間か弾が先に切れます。
八八艦隊でも、46cm砲搭載艦だけで戦をするものではありません。

もう一つは、速度。
的速(的の速度)が下がれば、命中率は格段に上昇します。
命中率が上がらないときは、敵の1隻に砲撃を集中してまず速度を殺いでみましょう。
対人戦の時は、戦隊から損傷艦を外され速度を維持される可能性がありますが、その場合は1隻落伍させたと素直に喜んで下さい。独航艦は命中率も落ちるので放って置いて構いません。後で手の空いた時に叩けばいいです。
逆に高速を維持できなければ、無事な艦も次から次へと被弾する可能性が出てきます。
速度が落ちた艦は戦隊から切り離すことも考えて下さい。


おっと、殴り合う前にまずは殴り合う相手を見つけられなければ、話にもなりませんね。
その辺の話を少し付け加えましょう。

天候の影響が思いの外大きいです。
天候には雨や霧、豪雨や濃霧といった種別がありますが、悪天候の場合は視認距離が大きく制限されるのです。
敵に対して砲力で不利な艦隊は、天候を利用して射程内に忍び寄るという戦術も出来ます。
もっともこれは相手の動向を把握できていることが条件ですが。
多くの場合は、不意に至近距離に現れた敵艦隊と胸倉をつかんでの殴り合いになると思われます。
こうなると立派な装甲も紙屑同然で、出会った時の対勢の善し悪しの方が重要でしょう。
悪天候の時は無闇に敵方に突っ込まず、落ち着いて待つのも手です。
それが許されるシナリオであれば、ですけどね。

そして魚雷襲撃よりも偵察第一。
激闘! ソロモン海戦史DX」に慣れた魚雷戦信奉者の皆様には酷な話ですが、日本海軍の新型艦艇に装備された61cm魚雷以外の魚雷の存在は頭から追い出して下さい。
(61cm魚雷はやっぱり反則(笑))
はっきり言ってほとんど当たりませんし、それ以前に魚雷が届く距離に踏み込めません。
当時の魚雷の性能不足というのもありますが、戦艦の速射砲は強力無比です。
これを踏まえた戦術を組んで下さい。
より有益な理解は、巡洋・駆逐は戦力ではなく、艦隊の「目」と割り切ることです。
主力艦をいきなり危険に曝さない為の「目」の役割を担っています。
ですから味方の小艦艇は、大事に、時に大胆に潰していって下さい。
逆に敵の小艦艇は見つけ次第片っ端から撃沈することをお勧めします。
あるいは戦艦をもって敵水雷戦隊を刈り取るのも有用な戦術です。
あ、主砲砲弾は残弾が足りなくなるとまずいので、駆逐艦相手には慎重に使って下さい。


「インターネット対戦」について。
激闘! ソロモン海戦史DX」から付いた「インターネット対戦」機能は本作品にも付いています。
ジェネラル・サポートの用意するサーバーに接続して、全国各地のプレイヤーと無差別に、あるいは特定の人とだけプレイすることも出来ます。
チャット機能もありますし、結構楽しいと思います。
プレイ時間もそれほど長くならないので、時間のない社会人の皆様でも楽しめます。
この辺の詳しい解説や雰囲気は、ジェネラル・サポートのホームページをご覧下さい。


評点
操作系 ジェネラル・サポート特有の操作系ですが、今までのゲームに全て共通するインタフェースなので、「激闘!」シリーズユーザーであれば、何のためらいもなく操作できるでしょう。
初心者にはちょっと取っつきづらいかも知れませんが、慣れの問題だと思って下さい。
慣れれば非常に使い易いです。
でもDOS時代の亡霊としては、やはりキーボードの時代が懐かしく。。。ひゅるるるる(寒)
ショートカットキーを駆使すればやってやれないことはないのですが、恨めしやゲイツ窓。

1点気になるのは、プレイ中に動作が妙に重くなることです。
複数のユーザーからジェネラル・サポートに対して既に指摘が入っているようですが、実際気になるほどの重さがあります。
BGMを切れば多少軽くなる感じがしますが。。。

★★★
グラフィック ゲーム画面もジェネラル・サポート社のいつもの画面です。
特に違和感を感じることはないでしょう。
艦艇の図面は水上部分・側面図のみ。
いつも繰り返しますが、見せるためのCGではなくゲーム上必要なCGなので、これで良いと思います。
最近のは逆にごちゃごちゃ目にうるさいのもあるので、すっきりしてて気持ちいいくらいです。
全然問題なし。
★★★
音楽 激闘! ソロモン海戦史DX」で「軍艦行進曲が流れない〜」と泣いていたのですが、お願いが通じたのか本作品ではBGMが選択可能になりました。
海軍行進曲、軍艦行進曲、錨をあげて、ティッペラリーへの長い道、プロイセンの栄光の5曲からアサインできます。
(ヘルプ -> オプション -> BGM選択で変更可能)
細かい修正かも知れませんが、私としては非常に嬉しい修正です。
欲を言えば、曲の解説(どこの国の曲とか参考文献とか)があるととても助かるのですが。。。え、それは自分でやれと?
ごもっとも。
★★★★
オープニング オープニングは伝統のテキストによる背景説明とCGです。
はっきり言って映像に期待しないで下さい。
他社のゲームと異なり、映像の出来を云々するとこの作品の本質からずれてしまいます。
この作品にとってのオープニングの存在価値は、全く背景説明にあります。
まずは一読。
★★★
資料価値 ジェネラル・サポート名物「分厚いマニュアル」、今回は148ページ(第一版)です。
艦艇の数値表や登場艦船一覧に加えて、作品中のシナリオに登場する海戦の説明も加えられています。
第一次大戦の海戦は今の日本人の間ではそれほど知られていませんので、これは参考になるでしょう。
自分が今何のためにどんな戦いを戦っているのか知らないと全くもって使命感に燃えませんので、非常に良い点だと感じます。
また提督の解説がありませんが、これはゲームのシナリオ選択画面の方に収容されていますので、そちらを参考にして下さい。
シナリオに登場する有名な提督がかいつまんで解説されています。

ところで、ボードSLGファンの流れを引きずっているプレイヤーにとっては、マニュアルにある「デザイナーズノート」が最も価値があるのではないでしょうか。
昔のボードSLGには必ずデザイナーの言葉が載っており、このルールは何のためにあるのか、私はこのゲームで何を表現したかったかということが述べられていました。
ジェネラル・サポートのゲームには未だその伝統が生き続けており、つまりこれは社長を始めとするジェネラル・サポートの皆さんの表現媒体であると考えるべきでしょう。
その意味では、これは本であり論文であり、彼らの史観そのものなのです。
本作品を購入したら、真っ先にデザイナーズノートを読むことをお勧めします。

★★★★★
難易度 激闘! ソロモン海戦史DX」以上に単純です。
大砲で敵の戦艦を殴り倒す。
これだけが目的であり、それ以外は何も考える必要はありません。
面倒くさい命中率の計算だとか何やらはCPUがやってくれます。
鉄砲を撃つこと以外では、艦隊運動と鉄砲の残弾に気を配って下さい。

簡単な注意点としては、戦艦は大砲では沈みません。
戦闘能力を奪ったらとっとと次の獲物を探しましょう。
落穂拾いは駆逐艦にやらせるのがコツです。

★★★★
総評 作品名は「激闘! 八八艦隊海戦史」となっていますし、社長の言葉も「八八艦隊のため」となっています。
しかし本当はビーティとシェーアの戦いがメインなのではないかという気もします(笑)
あそこで16点回頭をしなかったらとか、戦史をめくっていると艦隊運動がとても気になります。
本作はそのifをプレイヤーに試させてくれるだけのキャパシティは持ち合わせているように思います。
★★★★★

「激闘! 八八艦隊海戦史DX」は、株式会社 ジェネラル・サポートの著作物です。


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