激闘! 欧州海戦史


対応機種 PC-9801 VM/UV以降
価格 9800円
発売年度 1993年
備考 HDD対応 要MS-DOS2.11以降

紹介
ジェネラル・サポートの海戦シミュレーション作品第二弾です。
第二次世界大戦期のヨーロッパ戦域で展開された、枢軸軍と連合軍との海戦を扱った戦術級シミュレーションゲームです。
プレイヤーは、枢軸国海軍あるいは連合国海軍を受け持ち、シナリオ毎に定められた勝利条件を満たすことを目的としています。


内容説明
ゲームの冒頭、背景説明の最後、プレイヤーに向けたゲームデザイナーからの言葉として、こんな文言が示されます。

「いずれにせよ、このゲームは戦艦の為に作られた。健闘を祈る」

この一文がこの作品の性格を端的に語っており、これ以上何の説明も不要であるような気もしないでもないのですが、冗長な解説を企てると以下の通りになります。

第二次世界大戦において航空機が介在しない水上艦艇のみの昼間艦隊戦といえば、太平洋戦域で思い付くのはスラバヤ沖海戦くらいのものです。
一方、大西洋戦域では、航空機を介在しない水上艦艇同士の戦いが多く見受けられます。
航空母艦同士の戦いが熾烈を極めた太平洋では、陸地に対する艦砲射撃にその活路を見出さざるを得なかった戦艦たちも、大西洋では、本格空母の未投入や低性能な艦載機などの幸運な要素のため、海の王者たり得たのです。
本当は、Uボートと護衛駆逐艦・護衛空母部隊との地道な死闘こそが、戦争の勝敗を決したのですが。
ま、取り敢えず見た目にも華がある、戦艦同士の重量級の殴り合いを再現できるのがこのゲームです。


このゲームの特色と言えば、弾着観測機の存在感でしょう。
どのシミュレーションゲームを覗いてみても、重要視されていないどころか、その存在すらほとんど無視されている弾着観測機・・・
多くの場合、水上偵察機としての機能しか見てもらえなかったり、あるいはR部隊のような水上戦闘機モドキとしてしか登場していない観測機も、このゲームではその本来の任務・・・弾着観測を目的として登場しているのです。
なんとも観測機冥利に尽きるゲームではありませんか!
もっとも、敵艦の上空にいると、すぐに対空砲火に撃ち墜とされてしまいますけど。


もう一つ、このゲームには大きな特典がついています。
ゲーム中に登場する艦艇を自由に編成して、枢軸軍艦隊vs連合軍艦隊を楽しむことが出来るのです。
そしてここには特別ゲストとして、我らが日本の誉「大和級」二隻と、アメリカ新式戦艦の一番バッター「ノースカロライナ級」二隻も参加できるのです。
更に、計画倒れのドイツ戦艦「H級」、大戦中は不遇をかこったフランス戦艦「リシュリュー級」、果ては謎のソ連製戦艦「S.ソユーズ級」まで登場します。
まさに夢の対決なのですが、問題は、射撃用レーダーの有無まで忠実に再現しているため、天候が悪くて観測機が飛ばせないと、枢軸軍艦隊が一方的にボコボコにされてしまう可能性が高いことです。
大和にだって二二号がついていたんですけどねえ。使えたかどうかは別にして。


評点
操作系 操作系は、前作「激闘! ソロモン海戦史」に準じています。
キーボードで全ての用が足せるので、かなりスピーディな操作が可能です。
★★★★
グラフィック やはり前作に準じています。
ジェネラル・サポートの基本構成は、きっちり継承されています。
下手な彩色に激怒することもないので、やはり線画が好ましいですね。
★★★★
音楽 やはり前作に準じてしまっています(;;
BGMの貧弱さは継承して欲しくなかったのですが。
今回の選曲は日本人には全く縁遠い、ドイツ海軍のものなので、前にも増して辛いものがあります。
オープニング オープニングは、またテキストによる背景説明と取込みCGだけです。
しかしCGはなぜかイタリア戦艦。
てっきり枢軸海軍の代名詞みたいな「ビスマルク」か「ティルピッツ」、あるいは大英帝国の華「フッド」あたりを据えてくるかと思ったのですが、意表を衝いた選択でした。
大戦期のイタリア海軍は、あの人間魚雷以外ほとんど話題にも上らないような存在なのに、なぜでしょう?
ま、格好はいいんですけど。
★★★★
資料価値 マニュアルは128ページと、「ソロモン海戦史」に比べてやや増量しました。その内17ページが資料に充てられていますが、前作に比べてややデグレードという感を受けます。
最も残念な点は、提督の解説が無い点です。
また、日本人にとって馴染みの薄いヨーロッパ諸国の海軍艦艇の姿は異様に思えることもあります。当時の列強の海軍艦艇の設計思想などに踏み込んで言及していたなら、もっともっと完成度が高まったと思います。
え? そのくらいわかっている人間しか買わない?
むむ、一理あるような気もしますが、一応“いまひとつ”という評価にしておきましょう。
★★★
難易度 ソロモン海戦史」よりはややてこずるでしょう。
思ったよりも弾着観測機の扱いが面倒です。
しかしそれさえクリアできれば、あとはひたすら大艦巨砲主義を味わえます。
魚雷や小艦艇の豆鉄砲なんか恐るるに足らず! 狙うは敵戦艦のみ! それ以外をちまちま相手にしていても、結末に影響はほとんどありません。
・・・強力無比な日本海軍の九三魚雷があれば、また違うのですが。

しかしこのゲームを見ていると、日米両海軍の質の高さが良く分かりますね。
同時期の日米海軍と英独海軍とでは、見た目以上に実戦力の開きがあったのではないでしょうか。
もっとも、艦隊同士が正面きって戦えばの話ですね。
ひたすら艦隊決戦思想に凝り固まっていた日米海軍(実は米海軍は、開戦当初は通商破壊戦に対応していなかったのです)と、シーレーン確保主眼の英海軍・通商破壊戦一辺倒の独海軍とでは、必要となる力の質が違いますから。

★★★★
総評 面白いことは面白いのですが、やはり艦名に馴染みの薄いものが多く、思い入れができないのが最大のネックでしょう。
ソロモン海戦史」の方が面白いと感じてしまいます。
八八艦隊vs三年計画案艦隊とか、仮想オレンジ作戦などであればと。
ヨーロッパの水上戦力に明るい人ならば、十分に楽しめるでしょう。
しかし、希有かも知れません・・・
★★★

「激闘! 欧州海戦史」は、株式会社 ジェネラル・サポートの著作物です。


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